+++ 鳥はどこへ行く +++
−7−
特大の花火が上がった。ドーン、と耳をつんざくような音がして、
周りからおお、というどよめきと拍手が起こった。
けれど私と小鳥の姉妹は、声も上げずにじっと空を見上げたまま
だ。
私は続けた。
「お姉ちゃんね、自分が来年3年生になったときに、あの大会で笑える
だろうかって思うと、今でも怖いんだ。勝負の世界って、すごく厳しいんだ。
確かにお姉ちゃん、さっき駅に行く時剣道好きだって言ったけど、本当は
好きだけじゃやってけないぐらい、ツライよ?」
小鳥は、じっと私の言葉に耳を傾けているように見えた。
「だから最近、お姉ちゃん暗かったし、練習も遅くまでやったんだ」
「・・・・・・そうだよ」
その時、最後の一発なのか、形容しがたいほどの大きな大きな花火が
上がった。キラキラ、ジリジリと火の粉が美しく地上に舞い降りるまで、
感嘆と喜びの声は鳴り止まなかった。
そして闇が訪れた時、一瞬、辺りにいた誰もがシンと沈黙し、そして
惜しむような拍手が沸き起こった。
私の中で、夏が終った、大会も終った。そんな寂しい思いと、これから
自分が中心になる部活への武者震い、のようなものが奇妙に体を襲った。
「そうだ!」
突然小鳥が大きな声を出して立ち上がり、私を驚かせた。
「まだ食べたいのがあったんだ。もう1回、お店、端から回ろう」
はいはい、と言って私も立ち上がり、服についた草をはらった。
結局小鳥は、私の説明を、忠告を、どう思ったのだろう。つらい運動部に
小鳥が耐えられるのか、私には分からないけれど・・・・・・。
でも分かっていることは一つ、もう彼女は思ったより大人なんだ、1人で物
を考えることができるんだ、ということ。新鮮だった。
私と小鳥は、また手を繋いで夜店の明かりに顔を照らされながらしばら
く歩いた。
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