+++ 鳥はどこへ行く +++

 −6−

 「花火以外でも、ここはきれいなところだね」

 その小鳥の声に、思わず彼女の顔を見た。先ほど買ったかき氷を左手に、

フランクフルトを右手に食べながら、小鳥はうっとりとした表情を水面に向け

ていた。

 やっぱり、姉妹だな。私はおかしくなって、微笑んだ。

 

 花火が上がり始めた。近隣でも有名なこの花火大会は、何万発と打ちあ

がる。赤や緑、黄色、青、紫、金色・・・・・・。

 最初の頃こそ「わあ!」「すごい!」「見て見て!」と叫んでいた小鳥が、いつ

からか急に黙っていることに気がついた私は、そっと彼女の横顔を盗み見た。

 パアッと上がった花火に照らされた小鳥の顔は、私の知らない1人の女の子

の顔に見えて思わずドキリとした。

 「あのね・・・・・・」 

 小鳥がそう呟いたのは、それからどれぐらいの花火が上がった頃だろう。

 「何?」

 「お姉ちゃん、何年生で剣道始めたんだっけ?」

 「えっと。小学校2年生の時かな」

 「・・・・・・私も剣道、始めようかな」

 えっ。と、私は驚いた。‘剣道なんて、汗臭そうできつそうだ’とよく言っていた

小鳥の口から出た言葉とは思えなかったからだ。

 「急にどうしたの」

 「よく分からないけど、おもしろうそうだなって思っただけ」

 私は複雑な心境になった。この自分の気持ちをどうしたら分かってもらえるか、

言葉を一つ一つ選びながら、時に花火を見上げながら私は熱にうかされたよう

に話し始めた。

 「あのね、剣道って、思ったより大変なんだよ。おもしろいだけでは、できない

よ。お姉ちゃんね、つい最近、玉竜旗っていう大きな大会に出たの知ってるよね。

2回戦で負けて、随分と悔しい思いをしたんだ。

 剣道のすごく上手な先輩の主将が、終った後泣いてたのを見てすごくつらかった。

お姉ちゃんは先鋒って言って、最初に相手と戦う役割りだったんだけど、負けた。

それが響いたんじゃないかな、なんて思って、お姉ちゃんが先輩を泣かしてしまった

んじゃないかななんて思って、たまらなかったんだよ」

 

     

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