+++ 鳥はどこへ行く +++

 −3−

 「早くしないと、いい場所取られちゃうよ」

 小鳥が、地団太を踏むような仕草でベットからスラリと伸びた足を

じたばたさせた。私は「ちょっと待ってよ」と呟いて、鏡の前でワンピ

ースの最後のボタンをとめる。

 「よし。お待たせ。行こう!」

 私と小鳥が部屋を飛び出してリビングに向かうと、母と父がまた

ビール片手にプロ野球を見ていた。私たち2人の姿を認めると、父は

「おっ」というような顔をした。

 「気をつけて行きなさいよ」

 母は立ち上がってきて、小鳥のブラウスの襟を正した。分かったよ、と

私は返事をし、母にお小遣いをもらって玄関に向かった。

 「小鳩、小鳥をよろしくね」

 「気をつけて行くんだゾ」

 母と父の声を背にして、私はサンダルを履いた。小鳥は「行ってきまー

す」と陽気に声を出している。

 

 玄関のドアを開けると、空気はいきなりムッと熱帯夜の風で私たち

姉妹を包んだ。家の前の道路を、花火大会に向かう町内の人々が何人か

歩いていた。

 「お姉ちゃん、けっこう人、行ってるね」

 小鳥はやはり場所取りが心配のようで、私の手をグイと引っ張った。

 ふと、私は不思議な気持ちになる。小鳥と手をつないだのは、いつ以来

だろうか?と。

 アスファルトの道を駅に向かいながら、私は小鳥と手をつないだまま

チラと彼女を見下ろした。見ないうちに、また背が伸びたかな。小学校

3年生にしては背が高い方だ、将来はモデルになるのかしら、とつい昨日

母がにやけていたのを思い出した。

 でも、小鳥がどんなに背が高くなろうとも、モデルになろうとも、私にとって

妹の小鳥。小さな小さな妹に違いはない。

 「お姉ちゃんさあ」

 突然話しかけられ、私は我に返った。なに?と小鳥を見る。彼女はじっと

前を見つめていた。

 

     

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送